この物語はシリーズでお届けしています。
▶ 第1章:出会い から読む
罪と知りつつも、彼といる時間は幸福そのものだった。背徳の中にこそ、私の心は自由を感じていた。
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許されない幸福

あの夜、胸を締めつけた罪悪感は、
日が経つごとに薄れていった。
「いけないことをしている」という意識よりも、彼と過ごす時間の温もりのほうが鮮やかに残っていた。
LINEの着信音が鳴るたび、心臓が跳ねる。
スマホを開けば、「おはよう」の文字が並び、その隣に照れたような絵文字。
たったそれだけのやり取りなのに、気持ちは一瞬で彼のそばへ飛んでいく。
仕事の合間に送られてくる短いメッセージも、帰宅中の何気ない電話も、すべてが宝物のように思えた。
会えない日が続くと、胸が少し苦しくなる。
けれど、その苦しささえ「彼を好きだという証拠」のように感じてしまう。
罪を重ねているはずなのに、なぜか幸せだった。
その幸福は、甘い毒のように私を支配していった。
気づけば、罪悪感は小さなトゲになり、時折胸の奥でかすかにうずくだけになっていた。
次回予告

「幸せ」だと感じるほど、背徳感は濃くなる。
けれど、それでも心は彼を求め続けていた。
次回「日常に溶ける波」――禁断の愛が生活に入り込む。
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